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粋な恋愛模様

暮れ正月は暇があるため、本でも読みたいと思いたった。
生憎、年越し前に本屋で調達できたのは雑誌だけ。
いざとなると大量の本を前に、当りもつけずに一冊選ぶ、というのは、
難しい技、と痛感。

実家には、学生の頃に買って読んでいない本や、読み止しの本などが山とあるのだが、
ふと母の洋裁・料理の実用書が並ぶ書棚を見遣っていて、
何の気なしに抜き出して読み始めた本が当りであったのは、嬉しい誤算。
それが、中里恒子「時雨の記」

現代からは一昔前、と感じるような文体・風景が郷愁を誘う、大人の恋愛を描いた非常に粋な小説。
読んでいる間中、私の方まで至極嬉しかった。
40代の未亡人と50代の細君持ちの話なので、いわゆる不倫の関係ということになろうが、
どろどろ感は微塵もなく、飄々とした雰囲気の中にふたりの絶妙のやりとりの具合が、
淡とした語り口なのに温かく紡がれていて、ふとした拍子に笑みを浮かべたりほろりとしたり。。。
文体も不思議な調子で、句点の多用、語り手が頻繁に変わること、語調の不統一など、
はじめ少し読みづらかったのが、慣れてくると味がある文章だと思える。

私にとって何がツボかといえば、茶道具や掛け軸、瓶、皿などの道具類の話や、生活の中でちらりと垣間見えるテイストやエッセンスのようなものが、とても優雅に嫌味なく物語の中に織り込まれていること。
男はものなり人なりを一通り見てきており、良し悪しや自分の好みをすっかり確立している。
そして、特に意識せずとも女が生来持っている好み、テイストが、男の良しとするものに一致する。
そういう感覚的な一体感が、主に道具に関するやりとりや生活の中のふとした配慮などによって語られていて、
そこが大変魅力。

全くもって、男のような人となりや趣味の男性は素敵だと思うし、女の生き様は私の憧れる様であり、
ふたりのような関係をずっと保っていけたら、理想的のように思える。
新年早々、良い本にめぐり合えて、ちょっと嬉しい。
by chocolat_13 | 2005-01-04 01:06 | 本・映画

カフェと古楽と着物好きの   お気楽ガンバ弾きの日常です。 


by chocolat_13
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