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Cine de Chocolat -〆はフランス映画で-

映画週間のシネ・ド・ショコラ、最後の一本は雰囲気たっぷりのフランス映画。
何年も前に見たけど未だに音楽が強烈な、憂いあふれる作品。


Monsieur Hire

往時のパトリス・ルコント作品。
この監督の初期の映画は、何て秀逸なものばかりだったんだろう。
「髪結いの亭主」、「タンデム」、「タンゴ」など、どれを見てもはずれが無かった。
"Monsieur Hire" は、そんな頃のルコント作品。
邦題は「仕立て屋の恋」 
前にも書いたけど、どうも邦題のつけ方って、とんちんかんなのが多い。
ありふれたメロドラマ仕立てのように思える邦題に比べたら、
すっきりシンプルな原題の方が数倍良いと思えるのは、気のせいだろうか・・・?
(あっ、でも「髪結いの亭主」は名訳! なかなかこんないい訳、お目にかかれないよ)

日本では「髪結いの亭主」がとても評価されてヒットしたけれども、
実はこの作品の方が出来が格段に良かったのでは、という声もあったような。
確かに、ミステリー仕立てのメインストーリーに、主人公イール氏の恋心を上手くからませ、
しかも通り一遍ではない雰囲気に仕立て上げる手腕は絶品。
少女殺害の犯人を追う刑事の追及と、主人公イール氏の起伏の無い生活、
そして彼の愛する女性の生活とが、徐々に絡み合い、最後に行き着く先は・・・。

この映画を映画館で見た際に、とても心に深く残ったのが音楽だった。
イール氏が、向かいのアパルトマンに住む自分の愛する女性の部屋を見下ろす時に、
いつもかけるお決まりの音楽。 メランコリックで非常に切ない。
イール氏はレコードに針をおとし、それから窓辺にたたずんで、
愛する女性の窓の向こうを覗き込む。
この音楽が耳について離れなくなり、目を皿にして頑張ってクレジットを確認した。
曲はブラームスのピアノ五重奏曲第1番Op.25

喜び勇んでCDを買ってきて、家でかけてみた時のことは、はっきり覚えてる(笑)
ゆっくりの物憂げなたゆたうような音楽だったので、きっと第2楽章とかだろう。
そう思って見ると、このカルテットは4楽章編成。
1曲目はAllegroだから違う・・・、と思い、2曲目がかかるも、
全然お目当てのメロディが現われない!
ええ・・・じゃあ3楽章?? Andante con moto って書いてあるし、そうかも・・・。
まぁ、ドヴォルザークも3楽章が一番いいし・・・、
などと訳のわからないことを考えつつ、聴き進めるも・・・結果は×
じゃあ4楽章だったの?と驚愕しているうちに始まった4楽章は、
えらいテンポの速い勢いのある曲。
あれ~??? この曲じゃなかったの~???
クレジット見損なったかしら・・・、と愕然と肩を落としていると
しばらくして突如、Rondo alla zingarese、Presto、と怒涛のように続いた後で、
きらめくかの旋律が!!!
えええ、ここで入るなんてありなの~!!??と、大衝撃(笑)
私の買ったCDはArtur Rubinsteinのピアノだったのだけど、彼のテンポはかなり速め。
映画の中でかかっていたのは、すごくゆったりとした演奏だったので、
何だか全然違和感のあるまま、そのメランコリックなパートはあっという間に過ぎ去り、
後にはMolto prestoの疾走感、再び。
聴き終わってア然(爆)

大体、イール氏は、的確にレコード針を落としていたのだから、
あんな曲の途中にピンポイントで挿入されてるなんて、思わんわい!
誰だって曲の始めなんだと思うじゃないの~(>_<)
・・・と思って驚愕していた件の曲ですが、今回見たときに注目していたら、
イール氏が針を落とすシーン、ややためらいながら、
見定めるように針を置いていたのを発見!
うーん、これは曲のハザマの短いパートだ、ということを知った上であえて使っていたのね。
ビックリ!!
それほど、この音楽がこの映画の雰囲気にぴったりだった、ということなのだろうなぁ。
実際、見終わった後は耳について離れませんでした、この曲(^^;)

何だか回顧録のようになってしまって、全然映画の良さについて語ってないような・・・(笑)
ま、いっか。
付け加えると、鳩のおばあさんの話もすごく印象深かったのだ。
by chocolat_13 | 2006-05-01 23:43 | 本・映画

カフェと古楽と着物好きの   お気楽ガンバ弾きの日常です。 


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