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悲しい曲。

フランス音楽では、亡き人を偲んで作る「トンボー」という種類の曲がある。
有名どころでは、「クープランの墓」の誤訳で通ってるラヴェルの曲。
マレのヴィオル曲には、4つのトンボーがあるそうだ。
「サント・コロンブ氏のトンボー」、「リュリ氏のトンボー」、「メリトン氏のトンボー」、
そして「マレ・ル・カデのトンボー」
先日のフェスティバルの公開レッスンでこの話を聞いたのだけど、講師の先生は、
「マレ・ル・カデのトンボー」のことを「とても悲しい曲」とおっしゃった。

マレの師匠である「サント・コロンブ氏」と「リュリ氏」のトンボーは超有名曲で、
色んな方の録音がたくさん手に入る。
「メリトン氏」のは、その日の演奏会の演目だった。
「マレ・ル・カデ」のは聴いたことが無かったし、曲の存在も何となく聞いた程度だったので
このコメントには大いに興味をそそられた。 (と見えて、メモに曲名が書かれていた)

先日、探し物をしていてマレのCDをひっくり返していて、この曲の入ったCDを見つけた。
早速聴いてみたのだが・・・。

"Marais le Cadet" とは、「若いマレ」 つまり息子マレのことだ。
自分の息子を亡くしたマレが、彼のためにトンボーを作ったということ。
始めから終わりまで、ただただ悲しい。
他のトンボーに比べて、格段に悲しみ一色な感じだ。
しかもとても生々しい悲しみ。
サント・コロンブ氏やリュリ氏のトンボーは、とても整然として美しく透明で、
音楽の体裁が整っている、という印象がする。
でも、こちらのトンボーは感情の嵐、感情の渦、という感じだ。
月並みだが、マレはこの曲を書いていて、本当に悲しかったんだろうなぁ、と思う。
肉親を亡くした時の心情。
慟哭。 むせび泣き。 思い出しては唇をかむ。 胸の奥がうずく。。。
そんな状況が目に浮かぶよう。
マレがこんなに感情をむき出しにした曲は珍しいのでは、と思う。

人間マラン・マレに触れたような気がして、今までよりもマレという人に親しみを感じた。
by chocolat_13 | 2006-06-18 00:01 | 音楽

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